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不妊症 6 (体外授精)

不妊症で3年前から婦人科に通院中の35歳女性。1ヶ月前に凍結保存した授精卵を3ヶ月後に子宮に戻す予定の為、それまでに出来るだけ体力を回復させたいとのことで来院されました。

1年ほど前に自然妊娠をしたのですが、残念なことに子宮外妊娠だったとのこと。その後処置の為に大変な思いをされ、自然妊娠を諦めて体外授精をすることを決意したそうです。「慢性的な下痢」、「高眼圧症」以外に目立った愁訴はありませんが、望診や問診の受け答えから精神的に大分落ち込んでいることが伺えます。

精神的に落ち込んでいますので、まず、足の陽明胃経・三里穴、及び、伏兎穴を補い、さらに衝陽穴(右側)を補いました。「慢性下痢」 には衝陽穴(左側)を瀉し、「高眼圧症」には足の太陽膀胱経・殷門穴を瀉し、委陽穴を補いました。

また、この方の骨盤は右側が前屈し、左側が後屈しているので、骨盤を調整する為に足の少陽胆経・風市穴(右側)と陽陵泉穴(左側)を瀉しました。


【治療開始から35日目・治療回数6回】
  低温相のままで36.4℃。慢性下痢の症状は治まっていますが、前回生理が来潮してから2ヶ月ほど経過しているとのこと。そこで足の厥陰肝経・陰包穴と行間穴、足の太陰脾経・太白穴、足の少陰腎経・膝の上4横指の無名穴を補いました。

【治療開始から49日目・治療回数8回】
  高温相となり、36.8℃。その後も下痢の症状は治まっています。

【治療開始から70日目・治療回数11回】
  1週間後に凍結保存してある卵子を子宮に戻す予定とのこと。特に大きな経脈の乱れはなく、全身の調整を目的とした治療を行いました。「不安がないわけではありませんが、体調も良いですし、自信がつきました」と言われて帰られました。

この方の治療はこれで終了しましたが、それから2ヶ月ほどして、「お陰様で無事、7週目に入りました」と連絡がありました。



体外授精を行ったからといってすぐに妊娠に至るわけではありません。何回かの失敗経て漸く妊娠に至ったとしてもごく初期に流れてしまうケースや、10回以上体外授精を行っても着床すらしないケースも少なくないようです。これは、授精卵を受け入れる母胎側で妊娠する為の環境が整っていないからだと考えられます。

体外から強制的にホルモン調整をするということは、自らが持つホルモン調整機能を抑制してしまうことを意味します。たとえ、検査上の数値や何らかの症状として体の不具合が現れなかったとしても、体は少なからぬストレスを受けることになるのです。ですから、体外で授精させた卵子をタイミングをみて子宮に戻しても、妊娠に至らないケースが多いのは当然のことと言えます。

体全体のバランスを重要視している鍼灸医学では、経脈の状態を常に意識しています。「冷え症」や「便秘」、「頻尿」などの愁訴はもちろん、症状として現れる前の、心や体のストレスは経脈の変動として捉えることが出来るからです。

順調に着床−妊娠−出産に至る環境を整えるには、愁訴の改善はもとより、体が受けている見えないストレスを取り除かなければなりません。鍼灸治療においては、脈診・腹診から経脈の状態を把握し、各々の経脈の虚実に応じて的確な補瀉を加えることで経脈の調整にあたっています。体全体のバランスが整えば、愁訴、及び、未病の段階のストレスは緩和・消失し、妊娠の条件を満たすことになるのです。


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